推敲は言葉を差し替えて、詩文をより分かりやすくする作業ですが、この際「差し替える」などという悠長なことは言わずに、推敲は「言葉」を惜しみなく捨てる作業と考えてみましょう。とりあえず不要な言葉を捨てる。捨てる言葉の見極めが難しいのですが、それができれば、推敲作業の80パーセントは終わっているはずです。捨てれば当然俳句の字数が足りなくなるのですが、そんなものは字数が足りないままにほったらかしておけばそのうち何とかなるものです。とにかく捨てる、そのコツを身につけることが大切です。 それでは何をどう捨てるのか、今回の「まいまい句会」の句からいくつか言葉を捨てる作業を試してみましょう。捨てる言葉を俳句の脇にかぎ括弧で示してみます。
カフェに曲少しとだえて風花す 「少し」→カフェに曲とだえて風花す
風やめば色が見えたり風車 「たり」→風やめば色が見え風車
つくばひのへりに一杓春の雪 「のへり」→つくばひに一杓春の雪
囀りの出迎え受ける寺参り 「の出迎え」→囀り受ける寺参り
大寒の骨ぎしぎしと起き上がる 「起き上がる」→大寒の骨ぎしぎしと
冬晴れをひと日賜る越後かな 「ひと日」→冬晴れを賜る越後かな
握られて光透けゐるさよりかな 「握られて」→光透けゐるさよりかな
けふからは春の鳥なり庭に来て 「なり」→けふからは春の鳥庭に来て
青き草流れてくるや雪解川 「来るや」→青き草流れて雪解川
根に花に陽ざしたつぷり風信子 「根に花に」→陽ざしたつぷり風信子
早朝の魚版の音の余寒かな 「早朝」→魚版の音の余寒かな
つんつんと尖る梢の冬芽かな 「梢の」→つんつん尖る冬芽かな
寒明けの杭の頭の新しき 「頭の」→寒明けの杭新しき
洋館の鎧戸開くる春隣 「洋館の」→鎧戸開くる春隣
かぎ括弧の言葉がなくてもたいして意味に違いはありません。いい言葉があれば言葉を差し込み、見つからなければ「句を玉と暖めてをる炬燵かな 高浜虚子」くらいの気分でいいのです。今年はどんどん言葉を捨ててみてください。(m)