作句あれこれ④ 常識を詠まない
湯上りの団扇の風にやすらへる
この句は「湯上りの団扇の風」が常識です。
「団扇」という季語から惹起される言葉をいくつか考えて見ましょう。「団扇」といえばやはり「祭」でしょうか。「浴衣」「涼み」「縁台」なども「団扇」と切っても切れない言葉、変わったところで「うなぎ屋」なども思い浮かびます。
「団扇」という季語によって連想されるこれらの言葉が「団扇」と対を組んだとき、そこに生まれるのが常識です。掲出の句の「湯上り」もまた「団扇」の親類のような言葉です。「湯上りの団扇の風」では俳句の世界が常識の範囲で完結してしまい、広さも深さも生まれません。
「湯上り」と「団扇」のコンビが俳句にとってよくないとすれば何を持ってくるのか。そこで頭を働かせるのが実は俳句の醍醐味でもあります。
色々考えられるでしょうが、添削例を一つあげておきます。
暗がりで団扇の風にやすらへる