作句あれこれ⑨ 報告といわれる句
見たこと、聞いたこと、感じたことをそのままストレートに描写すればいいのですが、それらの事象をいったん自分の記憶に納めておいてから、「見ました」「聞きました」「感じました」というふうな句が報告の句ということになります。分かりにくいので、具体的な例を上げてみましょう。
手元にある『虚子五句集』から、虚子の句をいくつか報告の句に変えてみましょう。
やり羽子や油のやうな京言葉―→やり羽子や油のやうな言葉聞く
はなやぎて月の面にかかる雲―→はなやぎて月にかかれる雲を見る
石ころも露けきものの一つかな―→石ころも露けきものと思ひゐる
高々と枯れ了せたる芒かな―→高々と枯れ了せたる芒見る
斯く迄に囁くものか春の水―→斯く迄に囁く春の水を聞く
報告の俳句がなんとなく理解できたと思います。
おおまかにいえば「○○しましたよ」と人に教えるのが報告です。「ものすごくいい景色だったよ」と聞かされても誰も感動はしません。感動はより直接的に表現する必要があります。
しつこく言い寄らず、ぽんと突き放すように作るくらいがいいのかもしれません。(kinuta)