【鑑賞】
紙箱に莟の薔薇を剪りそろへ 長谷川櫂
咲いている薔薇が詠まれることが多いが、この薔薇は出荷される薔薇、「剪りそろへ」で丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。(松)
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西洋薔薇、しようび、花ばら、薔薇園、そうび
【関連季語】
茨の花、薔薇の芽、秋薔薇、冬薔薇
【解説】
バラ科バラ属の落葉樹の総称である。初夏、芳香のある花を咲かせる。茎には鋭い棘をもつ。赤白黄色オレンジ色など色もさまざまである。
【分類】
初夏・植物
【例句】
一輪ざしに活けたる薔薇の二輪哉 | 正岡子規 |
夕風や白薔薇の花皆動く | 正岡子規 |
障子あけて病間あり薔薇を見る | 正岡子規 |
憂なきに似て薔薇に水やつてをり | 安住敦 |
さきがけて薔薇の黄をとどけねばならぬ | 宇多喜代子 |
号泣の薔薇もあるべし薔薇のたば | 鎌倉佐弓 |
庭の薔薇汝に切り供ふ昨日また今日 | 及川貞 |
テームスのふなびとに寄せ窓の薔薇 | 京極杞陽 |
マタイ伝開きてありし薔薇の卓 | 原田青児 |
しばらくは眼鏡くもりて薔薇の部屋 | 細川加賀 |
旋盤のこんなところに薔薇活けて | 菖蒲あや |
わが病わが診て重し梅雨の薔薇 | 相馬遷子 |
教会の束ねて青き薔薇の棘 | 大木あまり |
咲き切つて薔薇の容を越えけるも | 中村草田男 |
ひと拗ねてものいはず白き薔薇となる | 日野草城 |
ぬれいろに夜昼となく緋薔薇さく | 飯田蛇笏 |
一つ一つ覗きし薔薇の渦に酔ふ | 蓬田紀枝子 |
朝風に薔薇惜しみなく香を放つ | 木下夕爾 |
かくれ泣く妻が肩見ゆ白薔薇 | 有働亨 |
月の露光りつ消えつ薔薇の上 | 鈴木花蓑 |
塹壕に薔薇しばらくはふるへたり | 齋藤玄 |
紙箱に莟の薔薇を剪りそろへ | 長谷川櫂 |
薔薇を剪る明るき雨でありにけり | 川村玲子 |