今日の季語_蛙(かはず)
【鑑賞】
明日は又明日の日程夕蛙 高野素十
明日もまた忙しいのだろう。それでも少しほっとしている感じがあるのは、季語である「夕蛙」の働き。季語がよく働いている、そんな俳句である。(松)
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殿様蛙、赤蛙、土蛙、初蛙、昼蛙、夕蛙、夜蛙、遠蛙、筒井の蛙、蛙合戦、鳴く蛙、苗代蛙、田蛙
【関連季語】
蝌蚪、蟇、牛蛙
【解説】
春になると蛙は冬眠から覚め、雄は雌を求めてさかんに鳴き始める。
【分類】
三春・動物
【例句】
古池や蛙飛込む水のおと | 芭蕉 |
月に聞て蛙ながむる田面かな | 蕪村 |
閣に座して遠き蛙をきく夜哉 | 蕪村 |
いうぜんとして山を見る蛙哉 | 一茶 |
痩蛙負けるな一茶是に有 | 一茶 |
田を売ていとど寝られぬ蛙かな | 北枝 |
手をついて歌申しあぐる蛙かな | 宗鑑 |
こだまする蛙の中の坊泊り | 阿部みどり女 |
昼の酒濁世の蛙聞きながら | 飴山實 |
山蛙けけらけけらと夜が移る | 臼田亜浪 |
初蛙これが余生の灯かと思ふ | 永井龍男 |
みちのくの夜汽車冷えゆく初蛙 | 皆川盤水 |
ふかざけのくせまたつきし蛙かな | 久保田万太郎 |
初蛙ひるよりは夜があたゝかき | 及川貞 |
明日は又明日の日程夕蛙 | 高野素十 |
さびしさに馴れて寝る夜の蛙かな | 上村占魚 |
初蛙湯町はづれに宿とれば | 森田峠 |
夕月や田舟めぐつて鳴く蛙 | 正岡子規 |
名所に住んでつたなき蛙哉 | 正岡子規 |
門しめに出て聞て居る蛙かな | 正岡子規 |
あしたよりあかるき雨の遠蛙 | 石橋秀野 |
漣の中に動かず蛙の目 | 川端茅舍 |
啼き立てゝ暁近き蛙かな | 前田普羅 |
ねむるなり萬の蛙の聲の中 | 相馬遷子 |
初蛙峠越すとき振り分け荷 | 大峯あきら |
みはるかす空の奥なる蛙かな | 中田剛 |
どこの水に鳴く蛙かな夜の雨 | 長谷川かな女 |
子を呼んで蹠踏ますや初蛙 | 長谷川櫂 |
目もとまで喉ふくらませ初蛙 | 長谷川櫂 |
木簡に添寝の蛙掘り出され | 津田清子 |
初蛙料理の間とて暗かりき | 田中裕明 |
初蛙天地眺めてゐるところ | 橋詰育子 |
しばらくは水の声かと初蛙 | 村松二本 |
昨日の句はや古びけり初蛙 | 松本梓 |
やはらかき赤子の蹠昼蛙 | 渡辺文雄 |
水揺れてすなはちそこに初蛙 | 大谷弘至 |
りりるると鳴き交してや初蛙 | 山内あかり |