今日の季語_青嵐
【鑑賞】
赤ん坊にはじめての靴青嵐 長谷川櫂
歩きだしたばかりの赤ん坊の足はとても小さく柔らかい。その足に初めて靴を履かせる喜び。はらはらしながらも、父母はわが子の歩行を見守る。若芽の息吹を伝えるかのように、新緑の中を強い風が吹き渡る。
何故ゆえに季語が「青嵐」なのか、その辺にも思いが至る一句である。(あかり)
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風青し
【解説】
青葉のころに吹く強い風のこと。
【分類】
三夏・天文
【例句】
石打つて鶴飛ばせたり青嵐 | 臼田亜浪 |
みどり児の香が先にくる青嵐 | 加藤知世子 |
青嵐吹きすぼまりし虚空かな | 加藤楸邨 |
大手より源氏寄せたり青嵐 | 夏目漱石 |
青嵐大樹はいつも仰がるる | 岩岡中正 |
艪のきしりいよ~たかし夏あらし | 久保田万太郎 |
下京を過ぎてしばらく青嵐 | 桂信子 |
たちまちに涙の乾く青嵐 | 原田青児 |
青嵐一蝶飛んで矢より迅し | 高浜虚子 |
青嵐柱に背をもたせたる | 高濱虚子 |
本丸の櫓普請や青嵐 | 寺田寅彦 |
古桑に掛けある魚籠や青嵐 | 芝不器男 |
縁臺のうすべりとんで青嵐 | 星野立子 |
棟二つ谷に沈みて青嵐 | 西山泊雲 |
病む窓のひとつにあふれ青嵐 | 石川桂郎 |
滞船のひしめき摶つや青あらし | 前田普羅 |
雉子の声青嵐をも劈(つんざ)けり | 相生垣瓜人 |
一睡の乱さるもよし青嵐 | 村越化石 |
紫蘇を吹く播磨の国の青嵐 | 大峯あきら |
青嵐の到ると見ゆる遠樹かな | 日野草城 |
川瀬ゆるく波をおくるや青嵐 | 飯田蛇笏 |
峡中のひとの生きざま青嵐 | 飯田龍太 |
大木に熊の爪跡青あらし | 飯田龍太 |
おごそかに離宮閉ちたり青嵐 | 尾崎紅葉 |
島を出し船にしばらく青嵐 | 片山由美子 |
青嵐目を見ひらいて飛騨に入る | 有働亨 |
ぬきんでし松のことさら青嵐 | 鈴木真砂女 |
酒にあれし胃をいとおしむ青嵐 | 鈴木六林男 |
入院も旅のひとつよ青嵐 | 飴山實 |
寝ころんで何の思案か青嵐 | 長谷川櫂 |
赤ん坊にはじめての靴青嵐 | 長谷川櫂 |
命名の半紙が壁に青嵐 | 藺草慶子 |