片栗の花に離れて牛繋ぐ 太田土男
一面に群れ咲くのが片栗の花。解説にもあるように、うつむいて咲く可憐な花である。その花を牛に踏ませまい、という配慮から「片栗の花に離れて」ということだろうか。牛一頭だけというのが少し気になる。農耕の牛というより、角突きの牛のようにも思える。(松)
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今日の季語_片栗の花
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かたかごの花、ぶんだいゆり、かたばなうばゆり、かたばな、はつゆり
【解説】
ゆり科の多年草で山地などに自生する。三月から四月にかけて二葉を出し、その間から花茎をのばして紅紫色花を咲かせる。花びらは六枚。うつむいたように咲く。「かたくり」だけでは季語にならない。「片栗の花」の「花」の一字が大切。
【分類】
初春・植物
【例句】
日洽し片栗の葉に花に葉に | 石井露月 |
かたくりの花に夕日の端とどく | 井上あい |
かたくりの花を夜明けの夢つづき | 井沢正江 |
片栗や自づとひらく空の青 | 加藤知世子 |
片栗の花の紫うすかりき | 高浜虚子 |
足のべて休む片栗の花あれば | 細見綾子 |
かたかごの花や越後にひとり客 | 森澄雄 |
かたくりは耳のうしろを見せる花 | 川崎展宏 |
片栗の花を咲かせて山しづか | 長谷川櫂 |
片栗の花に離れて牛繋ぐ | 太田土男 |
かたかごや豪商水の神祀る | 野見山ひふみ |
かたくりの花山靴は行くばかり | 野沢節子 |
スタートを待つ片栗の花一列 | 野中亮介 |
片栗の一つの花の花盛り | 高野素十 |
かたかごに銀(しろがね)の日の懸りをり | 石田勝彦 |
かたくりの花の韋駄天走りかな | 綾部仁喜 |
かたくりの花咲き風の斜面かな | 伊藤敬子 |
冷えさびといふ片栗の花あかり | 手塚美佐 |
かたくりの花の四五日遠出せず | 西嶋あさ子 |
堅香子にまみえむ膝をつきにけり | 石田郷子 |
かたくりや日のやはらかきひとところ | 山本しほ |