一句を読み解く86
スカートを敷寝の娘きりぎりす 滝井孝作
スカートを布団の下に敷いて寝る。一晩経て、スカートの折目がくっきりとなる。これが敷寝(寝押し)、昔は誰でもやったことだが、近頃はそんな話もあまり聞かない。これも廃れつつある生活習慣かもしれない。
この句の「きりぎりす」人間の生活のすぐ近くで鳴いている。気密性の高い住宅に住んでいると、枕辺に虫の音を聞くことも難しいのだが、昔は家の中でも虫が鳴いていた。取り合わせの俳句であるが、「娘」も「きりぎりす」も、そして「作者」も同じ空間で呼吸している。(松)