一句を読み解く18

傘させば春潮傘の内にあり 中村汀女
「春の潮」という季語に雨は似合わないので日傘であろうか。日傘を差して波打ち際にいるのかもしれない。海に距離を置いての句とすれば、「傘の内」にある春潮は波のさざめきに他ならない。
この句の接続助詞「ば」は順接の「ば」、「ば」によってもたらされることがらは、予期の範囲内にあるものということになる。「雨がふれば傘を差す」「天気がよければ外に出る」というように。ただ、俳句における順接はそう単純ではないのが普通。汀女の句の順接も、いささか強引といえば強引であろう。強引に納得させる力があるからこそ、そこに詩が生まれるとも言える。それでは、順接の句をいくつか。(kinuta)
手をうてば木魂に明る夏の月 芭蕉
あられせば網代の氷魚を煮て出さん 芭蕉
愁ひつつ岡にのぼれば花いばら 蕪村
門を出れば我も行人秋のくれ 蕪村
春の日や水さへあれば暮残り 一茶
鼻紙を敷て居れば菫哉 一茶
野を焼いて帰れば燈火母やさし 高濱虚子
蛤を逃がせば舌を出しにけり 高浜虚子
障子張る話となれば聞き流す 飴山實
ささやけばささやきかへし巣の燕 長谷川櫂
幹打てば水の音して芭蕉かな 長谷川櫂
蒸しまんぢゆう食へば草津の湯もみ歌 永島智子
見上げればそこに弥彦嶺掛大根 山本しほ
