一句を読み解く17

春昼の指とどまれば琴も止む 野澤節子
句の内容は、「春昼の琴の音不意に止みにけり」と同じなのだが、その雰囲気はずいぶん違う。なにか手品を見せられているような言葉の使い回しである。「琴が鳴り止んだ」ということを、袋状のものを裏返すように詠んだのが「指とどまれば琴も止む」ということ。恐ろしいほど当たり前の因果関係に置き換えて見せたのだ。こういう俳句を「袋返しの俳句」とでも呼べばいいのだろうか。当たり前の因果関係が開き直っているようでもある。それでは因果関係が開き直っている句をいくつか。(kinuta)
堰きれば野川音ある霞かな 下村槐太
水あれば水の耀き桜東風 加藤耕子
帯とけば足にまつはり春の夜 高橋淡路女
春愁や日当ればわが影生れぬ 加倉井秋を
眼をひらきをれば闇見え二月ゆく 長谷川双魚
埴の鈴振れば音して春の暮 神尾久美子
へうたんを叩けば音よ秋の風 北側松太
