一句を読み解く11
かたく巻く卒業証書遠ひばり 木下夕爾
「ひばり」という三文字の季語を生かす切字はいわずと知れた「かな」である。「きのふにもいまごろありし雲雀かな 万太郎 」「永き日をさへづりたらぬ雲雀かな 芭蕉」という形で使われることが多いが、掲出の句は「遠ひばり」として「雲雀かな」を避けている。
作者が意識したかどうかは分からないが、中七が体言で終わっているところが「雲雀かな」を使いづらくしている。体言で終わる強さが「雲雀かな」という切字を添えた感動許さないのだ。「かたく巻く卒業証書」という感動と「雲雀かな」という感動がぶつかり合うのである。字余りにして「卒業証書固く巻いたる」と中七の感動を弱めれば「雲雀かな」に不自然さはなくなる。
卒業証書固く巻いたる雲雀かな
切字「かな」を導くために、中七を強く言い切らず連体形で流すのはそのためである。それでは、中七の連体形+切字「かな」の形をいくつか。(kinuta)
| 猪もともに吹かるゝ野分かな | 芭蕉 |
| 易水にねぶか流るゝ寒かな | 蕪村 |
| 大寺の静まりかへる師走かな | 正岡子規 |
| 句を玉と暖めてをる炬燵かな | 高濱虚子 |
| たましひのしづかにうつる菊見かな | 飯田蛇笏 |
| 水にまだあをぞらのこるしぐれかな | 久保田万太郎 |
| 木曽谷の奈落に見たる銀河かな | 松本たかし |
| 山国の闇恐ろしき追儺かな | 原石鼎 |
| 水晶の念珠に映る若葉かな | 川端茅舎 |
| 鮎季の山の重なる京都かな | 長谷川櫂 |
| 縄文の土器の眠れる枯野かな | 永島智子 |
| つぎつぎと墓現るる雪解かな | 岩井善子 |
| 曼陀羅に朝日差し入る氷柱かな | 北側松太 |
| 石のごと鯉動かざる余寒かな | 山本しほ |
| 夕闇のひろがつてゆく刈田かな | 内田朋子 |
| 松風の音に鎮もる茅の輪かな | 河村蓉子 |
