春待つ心

「冬を待つ」「夏を待つ」という季語はない。「秋を待つ」という季語はあるが、あまりかえりみられる季語ではなく、どの歳時記をみても例句は少ない。やはり「春を待つ」なのだ。草木が芽吹き獣が冬眠から覚め鳥や爬虫類が繁殖期を迎えて万物の動きが俄かに活発になる季節、それが春である。その春を待ち焦がれる思いが晩冬の季語「春待つ」である。
一脚の椅子に春待つ心あり 長谷川櫂
句の「一脚の椅子」、暖かくなるとそれに座って執筆でもするのだろうか。冬の間はもっぱら炬燵というところ。「一脚の椅子」にもそれに対する「机」にも机の上の「ペン」にも、そして、その辺に転がる石くれにも春待つ心があるという一句かもしれない。(松)
