季語散策20 十三夜

朝晩はやっと涼しくなってきたこの頃、虫の音や月の美しさを愛でる余裕が出てきました。
月にまつわる季語は多いのですが、「十三夜」を名月の二日前の月と勘違いされていませんか。「十三夜」はよく知られた季語ですが、中秋の名月から約ひと月遅れの名月で、俳句では「後の月」とも言います。
今年の中秋の名月は九月十九日にあたり、十三夜は十月十七日になります。深まった秋に愛でるこの月を名残の月、また豆や栗の収穫の時期にあたりこれらをお供えすることから、豆名月、栗名月などともよばれます。
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稲懸けて里しづかなり後の月 蓼太
後の月は秋も奥まったころ。刈り入れの終わった田には稲架が立ち、収穫した稲がかけられている。安らかで喜びに満ちた里の秋。
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みちのくの如く寒しや十三夜 山口青邨
青邨はみちのく盛岡のひと。後の月はおおむね十月の末あたりになる。仰いだ月は冴え冴えとして冷えた空気にふと、ふるさとの寒さが思い出されたのであろう。
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繭鍋のほのかにぬくし十三夜 金尾梅の門
繭鍋は絹糸を紡ぐために繭を煮た鍋。大きな鍋に残る湯のぬくもりが、だんだんと冷えてくる夜を感じさせる。
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色鯉の色の見えゐる十三夜 森澄雄
十三夜という優しい響きがなんとも女性的でつややか。ゆらりと揺れる鯉の色が月明りになまめかしい。下五を「後の月」と置き換えてみると、「十三夜」という言葉の働きがわかる。
(立)
