季語散策5 端居

「端居」の「端」とは家の端を意味する。縁側や露台のようなところ。「涼み」と違うのは、家を離れずに涼を取るのである。家にいて涼を求める。これが端居の本意である。
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端居してただ居る父の恐ろしき 高野素十
戦前の父といえば皆、この句のような存在感のある父親だった。家長として一家を守るための後姿が闇の中に見える。大人として親として男性としての姿は、現代のパパとは明らかに異なる。
いふまじき言葉を胸に端居かな 星野立子
胸に秘めた言葉とは、もしかしたら恋の告白か深刻な忠告か。それは何か事を大きく作用する言葉なのだろう。端居で大切なのは一人であるということ。二、三人ではあまり端居とは言わない。「いふまじき言葉」とあるが、作者には告げるべきかどうか迷いがあるのかも知れない。
小鼓の稽古すませし端居かな 松本たかし
鼓の稽古を終え、一息ついた静かな安堵感。気持ちの高ぶりや緊張が暗がりに開放されて心の中にも風が通う。
一生を悔いてせんなき端居かな 久保田万太郎
多くの庶民は自分の一生を省みて、良いできごとも悪かった事もこんな気持で括るのでないかと思わせる、万太郎らしい一句。
大阿蘇の真つ暗闇の端居かな 北側松太
以前、黒部渓谷にある一軒宿の温泉に行った時のこと。夜、真っ暗な中で、真っ暗な山を感じていると、その闇の底知れぬ深さに恐怖に似たものを感じた事がある。この端居、雄大ではあるが少し怖い。(立)
