一句を読み解く56

あぢさゐのどの花となく雫かな 岩井英雅
紫陽花に雨はつき物、紫陽花といわれて連想するのはまず「雨」である。したがって紫陽花を句にするときは雨を詠みこんではいけない、と教わる。
紫陽花に雨降りやまぬ一日かな
というように、雨を詠みこんではごく当たり前の俳句になってしまう。
掲出の句、雨を詠んではいないが、かぎりなく雨に近いところを詠んでいる。それでいて当たり前にならず新鮮さを感じるのは、「かぎりなく雨に近いところ」というわずかなずれのせいである。常識のすぐ近くにある新鮮さであろうか。
「風鈴と風」「団扇と風」「蛍と闇」「向日葵と太陽」「虹と雨」など、つきすぎといわれる取り合わせはいくらでもあるが、「わずかなずれ」を詠むことで新鮮さを生むことができるかもしれない。(kinuta)
風鈴に荒ぶる神ののりうつり 飴山實
風鈴や天駆け巡りくる風に 長谷川櫂
