季語散策3 団扇

竹の骨に紙を張り、柄を取り付けたもの。あおいで風を起こし涼を得る。扇子もあおいで涼を求める道具であるが、扇子にはかしこまった感じがあり、それに対して団扇にはくつろいだ感じがある。よそゆきの扇子、部屋着の団扇というところか。
へなへなにこしのぬけたる団扇かな 久保田万太郎
万太郎らしい肩の力の抜けた句。どこの家にもこんな団扇が一つや二つはあったはず。(団扇の数え方は柄(へい)といいます)どこかなつかしい。
奈良団扇すなはち白を選びけり 長谷川櫂
奈良団扇は工芸品に近い、高級品。淡い水色やほんのりとした鳥子(とりのこ)色が特徴で、奈良の風物である鹿や、正倉院に伝わる文様などが切り絵にされて貼ってある。こちらはちょっとかしこまった感じのするお客様用の団扇といったところ。「どうぞ」と言って差し出された団扇の中から白を選び取ったという句。白色がその場のすがすがしい庭の景色や人間関係までうかがわせる。
をととしの祇園祭の団扇かな 山内あかり
昨今お祭に参加すると配られる団扇。プラスチック製の骨で、その辺に忘れても落としても惜しげない代物。皮肉なもので、上等の扇などは忘れたり、落したりするのに、どうでもよいものに限って失くさずに手元に残っている。この団扇もそんな類のものかもしれない。(立)
