一句を読み解く39
お手討ちの夫婦なりしを更衣 蕪村
四月一日と書いて「わたぬき」と読ませる。これは、旧暦の四月一日が衣替えにあたるところからきている。昔の衣替えは「綿入れ」から「袷」に替えるというもので、「わたぬき」の文字どおり「綿」を抜くことが衣替えを意味した。
蕪村の句、「お手討ち」が何のことか難しい。不義密通を働いた男女が手討ちとなるところを許されて夫婦となり、衣替えの季節を迎えた、というのがこの句の意味らしいが、それにしても「お手討ちの夫婦なりしを」にこめられた意味を解くには、三段跳びくらいの想像力がなければ困難である。「明日明日手討ちにされる夫婦がそれでも心穏やかに衣替えをしている」と解してもよさそうな一句である。(kinuta)