一句を読み解く16

斯く迄に囁くものか春の水 高浜虚子
驚きを少し大げさに表現して見せた俳句である。俳句の構造はきわめて単純で、囁くもの=春の水という等記号が成立している形。無難なところなら「さらさらと囁きにけり春の水」なのだろうが、それでは凡庸、大げさに驚いて見せることで、作者の感動がぐいと表に出た一句である。自分の俳句に少し飽き飽きしてきたら、たまには大げさに驚いてみるのもいい。それでは、大げさな俳句をいくつか。(kinuta)
春雨のかくまで暗くなるものか 高浜虚子
あはあはと火を焚くことよ卯波海女 飴山實
六月を奇麗な風の吹くことよ 正岡子規
葉桜はつまらぬものよ隅田川 正岡子規
春や荒砥のよくまあ水を吸うことよ 池田澄子
なんとよく泣くよ今年の卒業子 森田峠
末黒野となりては静かなるものよ 細見綾子
木の芽どき横顔かくも照るものか 山崎為人
やはらかに雨降ることよ沈丁花 北側松太
