一句を読み解く8

薄氷をさらさらと風走るかな 草間時彦
春先にうすうすと張る氷が薄氷(うすらい)。割れやすく、日が差すとすぐに溶けるのではかない感じがある。時彦の句、「薄氷」というかろやかなもの、はかないものをさらにはかなくするように、薄氷の上をさらさらと風が走る。「一句を読み解く4」では対比の俳句について触れたが、こちらは補完の句とでもいえばいいだろうか。寂しさはより寂しく、強さはより強く、儚さはより儚くという俳句である。
それでは補完の句をいくつか。(kinuta)
石山の石より白し秋の風 芭蕉
干鮭も空也の痩せも寒の内 芭蕉
大の字に寝て涼しさを淋しさよ 一茶
死は深き睡りと思ふ夜木枯 相馬遷子
一月の川一月の谷の中 飯田隆太
まだ暑くなりゆくけふの暑さかな 長谷川櫂
