猫の恋

ここ数日、雪の夜更けに声をあげてうろつく猫がいる。猫の恋だ。毎年寒さの一番厳しいこの頃に聞くあの声には、命のせつなさと確実にめぐって来る季節の移ろいを感じさせられる。猫好きの者にとっては、これ以上不幸な猫は増やしたくない。春になるとあちこちで見かける野良の仔猫には可愛さより、憐憫の情が強い。とはいえ、当の猫たちは本能のまま子孫をふやし、お腹がすけば声を上げて餌をねだる。何の屈託も考えもない。
仔猫は母猫について行動するが、父親の姿はみた事がない。面白いのは真っ白な母猫から、真っ白、黒に部分的な白が混ざったもの、三毛、と全く違う三種類が生まれたりする。君たちのお父さんはいったいどんな毛並みなのと、想像するばかりだ。性格も兄弟と思えぬほど違う。見た目からは想像も出来ない仔もいる。トンと膝に上がってくる猫を抱きながら、この仔のお父さんはこんな甘ったれだったのか、いやいや君のおじいさんかも知れないね、などと話しかけても猫は何も答えない。
犬も猫も人に近く暮らしながら、猫はその恋を読まれ、仔を読まれてきた。多くの文人俳人が好んできたのは、人との絶妙な距離の保ちかたにあるのかも知れない。王朝の和歌の世界には猫は登場しないが、俳句の世界では人気ものだ。(立)
