一句を読み解く1

いとけなき手がふれてさへ餅の花 飴山實
この句で問題となる言葉は「手がふれてさへ」の「さへ」。味わい深い「さへ」であるが、難解な「さへ」でもある。
この句の場合の「さへ」は、最低限の条件を示す「さへ」と見ていいであろう。「犯罪者でさえ人間である」「一円玉でさえ大切なお金である」「ゴキブリでさえかけがえのない命を持つ」というような「さへ」である。
これに則して句を見てみると、「いとけなき手がふれてさへ」→「揺れてしまう餅の花」という筋がうかがえる。「いとけなき/手にさへ揺れて/餅の花」なのである。「揺れる」という動詞をあえて切取ったことで、「餅の花」の前に断崖のような「切れ」が生じて句に深みが生まれたのだが、この句のよろしさは、そこにとどまらない。「いとけなき手がのびて」そこにぽっと「餅の花」が咲いたような味わいも生まれているのだ。「いとけなき手がふれること」それが即「餅の花」であるようなおもむき。「さへ」という助詞が、まるで手品のように餅の花を次々に咲かせている。
「揺れる」という言葉を大胆に飛び越えて生まれた美しい俳句である。
大呂のみなさんも、この「さへ」を使って俳句を詠んでみてください。「手がふれて揺れる餅の花」という当たり前があって、そこを少し飛躍してみるのがコツです。
肩口に風入れてさへ蒲団かな
ひよどりの啄ばんでさへ梅の花
真つ青な空の色さへ氷柱かな
満天の星さへ越の寒造
庭めぐる下駄の音さへ霜柱 (kinuta)
