まいまい句会感想③
河鹿鳴く雨匂ひたる岸辺かな ひろし
河鹿蛙は美しい声で鳴き渓流など水のきれいな所に住みます。一般に我々が思っている蛙の鳴き声とは違い、和歌などに詠われているのはこの蛙です。「雨匂ひたる」が一般的な蛙を連想させてしまい季語が遠のいてしまったように思います。
門司港のはね橋跳ぬる夏始 ひろし
もっと単純に「高々と跳ね橋あがる夏の空」
雨あがり青葉若葉のしずくかな 雅宏
少し常套のようですが頂いた句です。「雨あがり」より「雨やんで」のほうがすっきりするのでは。
満開の花が見送る船出かな 森本哲雄
出来ている句ですが歌謡曲のように思えます。
淡々と家事をする妻鳥雲に 森本哲雄
この句も出来ているのですが引き付ける何かが不足です。「淡々と家事をする妻」が余りにも他人事で踏み込んだ描写がされていないと思います。例えば同じ様な内容で「黙々と家事こなす妻柿若葉」などとしても余り面白いとは思えません。
裸婦銅像桜の海を浮き沈み 冬菊
「桜の海」の「海」はいらないと思います。「裸婦像の花に浮んでいたりけり」。
初夏の鯉集団で尾鰭の音を立て いきか
絶壁を飛んで草むらの初夏の猫 いきか
「初夏の鯉」「初夏の猫」、「初夏」をつければそれで季語になる、という思いなら、早いうちに考え直すべきです。「初夏の風」や「初夏の海」などには季節感がありますが、「初夏の鯉」「初夏の猫」にはそれほど季節感を感じることができません。強引に季語を仕立てるのではなく、歳時記にある季語で句を作ることが大切です。
(律)