青空の映った湖面に水鳥の水輪が広がったのであるが、「空が湖面に映る」という手順を飛び越えて、いきなり「空へひろがりぬ」と飛躍した一句。この飛躍に立ち止まってはたと考え込んでしまうようでは、句のよろしさから置いてゆかれる。俳句に与えられる字数は基本的に十七であるが、これを窮屈と思うか、あるいは無限の空間と思うかで、俳句はがらりと変わってしまう。この句の飛躍を支えているのは、「湖面に映る青空」という常識。常識を詠んではつまらないが、常識をひとまたぎすることで、俳句は無限の世界に飛び立とうとする。(m)