【鑑賞】
安居とは石あれば腰おろすこと 高浜虚子
安居の目的は、雨期に活発になる草木や昆虫、小動物に対する無用な殺生を防ぐため、僧が、一定期間ひとところにこもって修行しようというもの。虚子の句、「安居」=「石あれば腰おろすこと」と解を示す。疲れたから腰をおろすのではなく、石に報いるために腰をおろす、という発想が面白い。
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夏安居、雨安居、夏、夏行、一夏、夏籠、夏勤、結夏夏入、夏の始、 夏百日、一夏九旬
【関連季語】
夏断、夏書、夏花、冬安居、夏解
【解説】
僧が寺にこもって修行すること。陰暦の四月十六日から七月十五日まで行われる。
【分類】
三夏・行事
【例句】
しばらくは滝に籠るや夏の始め | 芭蕉 |
夏百日墨もゆがまぬこころかな | 蕪村 |
夏籠のけしきに植し小松かな | 一茶 |
夏籠や種々に聞なす鐘の声 | 嘯山 |
夏籠や仏刻まむ志 | 正岡子規 |
俳諧の仏千句の安居かな | 正岡子規 |
夏籠や月ひそやかに山の上 | 村上鬼城 |
飲食のもの音もなき安居寺 | 篠原鳳作 |
夏行して磨り減らしたる硯かな | 長谷川櫂 |
びんづるは顔あはれなる安居かな | 阿波野青畝 |
安居とはうしろめたくも勤めけり | 阿波野青畝 |
陀羅尼助作る匂ひも安居かな | 阿波野青畝 |
夏花とて三ッ葉小花もうちまじり | 飴山實 |
歯を立ててもろこし食める安居かな | 井沢正江 |
安居寺木洩日一つ揺れざりし | 稲畑汀子 |
水浴ぶる木桶を岩に安居寺 | 茨木和生 |
半蔀をあげて夏安居はじまりぬ | 加藤三七子 |
石臼にたつぷりとみづ夏行かな | 宮坂静生 |
菩提樹のもとに安居の僧つどふ | 橋本鶏二 |
一堂に声のあふるゝ安居かな | 五十崎古郷 |
目をつむりても雨見ゆる安居かな | 後藤夜半 |
安居とは石あれば腰おろすこと | 高浜虚子 |
人数の少なきも亦夏行かな | 高木晴子 |
いつたんは瀬へ下る道夏花摘 | 山本洋子 |
十方にとどく筧や安居寺 | 篠原鳳作 |
湯葉の香の一椀賜ふ安居かな | 草間時彦 |
寂然と黒雲おこる安居かな | 村山古郷 |
玲瓏と鯉を飼ふなり安居寺 | 大石悦子 |
ここらまで来る海の鳥夏花摘 | 大峯あきら |
白雲の迅きがゆゑの安居かな | 田中裕明 |
夏籠や畳にこぼすひとりごと | 日野草城 |
杉深くいかづちの居る夏行かな | 富安風生 |
雨音の落ち着いて来し安居かな | 片山由美子 |