今日の季語_蝙蝠
【鑑賞】
かはほりや傾城出づる傘の上 太祇
「傾城」は遊里のこと、太祇は江戸の人なので吉原あたりで遊んだのだろう。細やかに降る夏の雨の中を蝙蝠が舞っている。(松)
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かはほり、蚊食鳥、家蝙蝠、大蝙蝠
【解説】
コウモリ目「翼手類」のほ乳類の総称。前肢の指の間に飛膜があり音もなく飛ぶ。夕方から夜にかけて動きがが活発になる。蚊食鳥ともいわれる。
【分類】
三夏・動物
【例句】
かはほりやむかひの女房こちを見る | 蕪村 |
かはほりのかくれ住けり破れ傘 | 蕪村 |
かはほりや傾城出づる傘の上 | 太祇 |
かはほりや月のあたりを立ちさらず | 暁台 |
かはほりや古き軒端の釣荵 | 暁台 |
我宿に一夜たのむぞ蚊喰鳥 | 一茶 |
ぬかるみに木影うつらふ蚊喰鳥 | 富田木歩 |
蝙蝠の一過千体阿弥陀より | 阿波野青畝 |
蝙蝠の生れて別るる父母の町 | 飴山實 |
蝙蝠やひるも灯ともす楽屋口 | 永井荷風 |
蝙蝠に一つ火くらし羅生門 | 芥川龍之介 |
かはほりや池にうつれる母の顔 | 桂信子 |
蝙蝠に暮れゆく水の広さかな | 高浜虚子 |
住むやうになつて一年蚊食鳥 | 高木晴子 |
更闌けて蝙蝠飛ぶや屋敷町 | 寺田寅彦 |
広々と水浸ける原蚊喰鳥 | 星野立子 |
蝙蝠や髪そりつかふ手くらがり | 正岡子規 |
蝙蝠の黒繻子の身を折りたたむ | 正木ゆう子 |
蝙蝠の卍飛び出す伽藍かな | 川端茅舎 |
浜町の路地の昔や蚊喰鳥 | 草間時彦 |
蝙蝠や蔵のあひだの隅田川 | 増田龍雨 |
荷車の片輪はづすや蚊喰鳥 | 大谷句佛 |
下町に隠し川あり蚊喰鳥 | 大木あまり |
河が呑む小石どぷんと蚊喰鳥 | 中村汀女 |
米洗ふ母とある子や蚊喰鳥 | 中村汀女 |
かはほりやさらしじゆばんのはだざはり | 日野草城 |
少年の帯もどかしや蚊喰鳥 | 木下夕爾 |