今日の季語_金魚
【鑑賞】
尾を振つて金魚なかなか進まざる 長谷川櫂
「懸命に尾を振っているけれども、なかなか進まないものだなあ」という逆接の俳句である。逆接は期待した結果を裏切るというもの。「けれども」や「といへども」で原因と結果が接続する。(m)
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和金、蘭鋳、流金、丸子、出目金、獅子頭、阿蘭陀獅子頭、錦蘭子、銀魚
【関連季語】
金魚玉、金魚売
【解説】
水槽などで飼う観賞魚。中国からわたったとされる。和金、流金、出目金、蘭鋳などの品種がある。泳ぐ様子が涼しげである。
【分類】
三夏・動物
【例句】
放たれて金魚の世界はじまりし | 阿部みどり女 |
浮いているだけで大きな金魚かな | 宇多喜代子 |
泳ぐときかんむりを振る金魚かな | 京極杞陽 |
子とあればわが世はたのし金魚玉 | 高橋淡路女 |
いつ死ぬる金魚と知らず美しき | 高浜虚子 |
川風に吹かれつゝをり金魚売 | 今井杏太郎 |
蘭鋳の真正面の目玉かな | 細川加賀 |
垂直に簀にて金魚の水分つ | 山口誓子 |
金魚夜を如何に過すや人は寝る | 山口波津女 |
金魚大鱗夕焼の空の如くあり | 松本たかし |
さみしくて金魚の水に指つつこむ | 菖蒲あや |
わが家のけふの出来事金魚の死 | 上村占魚 |
童話よみ尽して金魚子に吊りぬ | 杉田久女 |
あらあらと夜雲走れり金魚玉 | 村沢夏風 |
色街の雨静かなる金魚玉 | 大橋越央子 |
あるときの我をよぎれる金魚かな | 中村汀女 |
やはらかに金魚は網にさからひぬ | 中村汀女 |
金魚屋のとどまるところ濡れにけり | 飴山實 |
灯してさざめくごとき金魚かな | 飯田蛇笏 |
豆腐屋の笛あと戻り金魚玉 | 本宮鼎三 |
思ふ事金魚にばかりいひにけり | 野村喜舟 |
清らかに飼うて二匹の金魚かな | 野村喜舟 |
ぼんやりと鯉の影ある金魚かな | 藺草慶子 |
尾を振つて金魚なかなか進まざる | 長谷川櫂 |
一山と云ふも町中金魚売 | 渡辺文雄 |
金魚玉からくれなゐに染まりけり | 唐振昌 |
一匹を入れて二匹や金魚玉 | 北側松太 |
昼深き軒に吊るして金魚玉 | 岩井善子 |
夕風の盥に金魚あそびをり | 大塚哲也 |