今日の季語_雷
【鑑賞】
空港のごつた返せる雷雨かな 長谷川櫂
空港と雷の取り合わせが新鮮である。「雷雨かな」と切字「かな」を使っているところにも注目したい。
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神鳴、いかづち、はたた神、鳴神、遠雷、落雷、来火、雷鳴、雷声、日雷、雷雨、雷響
【解説】
入道雲の中で起きる放電現象である。空に大きな音が鳴り響き電光が走る。雷に打たれると大怪我をしたり命を落したりする。雷は音の季語であり、秋の季語である稲妻は光の季語である。
【分類】
三夏・天文
【例句】
端渓の硯の海に雷近し | 阿部みどり女 |
夕刊の束投ぐ雷雨熄みし駅 | 右城暮石 |
日雷水中に立つ脚二本 | 宇多喜代子 |
真夜の雷傲然とわれ書を去らず | 加藤楸邨 |
夜の雲のみづみづしさや雷のあと | 原石鼎 |
迅雷やおそろしきまで草静か | 原石鼎 |
赤米を噛めば来たりぬ日雷 | 原裕 |
遠雷や子の寝姿へ燈をともす | 香西照雄 |
海越え来し端書一葉遠雷す | 細見綾子 |
喪の妻や車窓の雷火浴びとほし | 細川加賀 |
虫喰の木佛尊し日雷 | 山本洋子 |
鳴神や暗くなりつつ能最中 | 松本たかし |
含みたる水に金気や日雷 | 須賀一恵 |
只一人雷雨を冒す夏野かな | 石井露月 |
遠雷やひとり昼餉の青菜汁 | 石橋秀野 |
遠近の森ことごとく雷火刺す | 石田あき子 |
安達太良の雷火に幾度通ひけむ | 前田普羅 |
夜の雷雨沼なす道に立ち憩ふ | 相馬遷子 |
山国に寝て遠雷を遊ばする | 村越化石 |
国栖人の貌にとどろく日雷 | 大峯あきら |
帰り来て吉野の雷に座りをり | 大峯あきら |
遠雷や人を待たして人待たず | 大木あまり |
遠雷や襖へだてし兄の黙 | 池田澄子 |
空港のごつた返せる雷雨かな | 長谷川櫂 |
はたゝ神七浦かけて響みけり | 日野草城 |
遠雷や福耳垂れて老法主 | 日野草城 |
大雷雨産屋の樹々を日々洗ひ | 野見山朱鳥 |
遠雷や出荷とゞきし勝手口 | 鈴木真砂女 |
日雷古き畳に響きけり | 武藤紀子 |
ばりばりと田を渡りゆくはたた神 | 岩井善子 |