季語散策24 水の秋

「水の秋」という季語がある。どの歳時記でも「秋の水」の傍題としてあげているが、「秋の水」が物質なのにたいして、「水の秋」は、「秋」や「秋の昼」などと同様、実体のない季語、秋という季節を強調する季語である。「水の澄み行く秋」「水のさやかな秋」というのが、「水の秋」の本意であろう。本来ならば、時候に分類されて一軒家を構えるべき季語なのに、どういうわけか、「秋の水」の分家格にされてしまっている。もともと、そんなに使われる季語ではなかったのかもしれないが、最近は「水の秋」のすぐれた句も多いだけに、もう少し日のあたるところに出てもいいのかもしれない。(松)
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十棹とはあらぬ渡しや水の秋 松本たかし
水の秋笛吹いてゐる男の子 柴田白葉女
船津屋に灯のひとつ入り水の秋 鷲谷七菜子
かろがろと鬼灯の泛く水の秋 飴山實
病む父のほとりに母や水の秋 長谷川櫂
草々の影の淋しく水の秋 岩井善子
