季語散策18 星月夜

星月夜、美しい響きを持つ季語ですが、星も月も出ている夜と勘違いされていませんか。星月夜とは新月の頃の星明りの夜空をさします。まるで満月の夜のようだということ、月のない空に満天の星が輝くさまは、月の明りとはまた別の趣があります。
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禅寺の門を出づれば星月夜 正岡子規
寺の門をでて空を見上げれば満天の星空。法堂の大きな屋根が黒々とそびえ、虫の声なども聞こえてくる。特別なことを述べている訳ではないが、穏やかで心満たされる句。
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われの星燃えてをるなり星月夜 高濱虚子
「われの星」とは何星だろう。秋に輝く星といえば、カシオペアだろうか。ひときわ光るこの星をわが星と定めた静かな志。
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山々を覆ひし葛や星月夜 松本たかし
晩夏から初秋にかけ、葛は山の木や背の高い草に絡み旺盛に繁殖する。時には空をめざしてお互い絡み合い、風に吹かれている蔓が巨大な昆虫の触覚のように見える時もある。葛に覆われた一面の山と星空、単純ながら秋の夜が余すところなく描かれている。
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ことごとく出て相触れず星月夜 鷹羽狩行
大きな光り、砂のような細かな光り、一つとして重なることがない星の光りに、果てしない宇宙の深さと広さが感じられる。
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その辺のものを枕に星月夜 北側松太
星月夜は三秋にわたっての季語。初秋の頃やっと涼しくなった夜に、ごろりと横になって空をみれば美しい星空。この頃になると、涼しさと共に夜の訪れも段々と早まる。
(立)
