一句を読み解く34
こぼれんとばかりに椿活けてあり 村上いと子(大呂3号より)
椿が壷を溢れるほど活けてある。椿は落花の植物、その落ちるさまに風情があるというので、「落椿」という季語まである。
句の「こぼれんと」は推量の形、こぼれるのではないかということ。「ばかりに」は「こぼれんと」の「ん」に付いて、意味を強める。今にもこぼれそう、ということであるが、「こぼれそう」という以上に動きを感じさせるのが「ばかり」の働き、畳み込むような力強さがある。椿の本質に迫った一句である。(kinuta)