食べもの歳時記2 芹
何年か前に芹をいただいた。それは今まで目にした芹と違い、くしゃくしゃとした単なる草だった。15,6センチほどの草に杉の枯葉や竹の葉っぱがからまり、根白草の名のとおり長い根がついている。市場に出回っている芹は30センチちかくあり、長い茎が綺麗にそろって野菜といえるが、この野の芹は野菜というには程遠いしろものだ。「何これ」という言葉を胸に飲み込み「どうやって食べるといいですか」と聞くと卵とじがいいという。丁寧に洗うと又少し嵩がへった。ものは試し、たいして期待もせずにいただいて驚いた。控えめながら高貴でなんとも形容しがたい香り。そうか、昔の人が芹を大切にしていた理由はこれだったのか!なんの無理もなく納得させられてしまった。そしてやはり、野のものなのだ、何分も立たないうちにアクがでて、卵とじの汁が汚れてくる。それでもおいしい。そもそもテーブルにだした時からアクが出る間もなく、皿はあっという間に空になってしまった。
この芹の卵とじ暖かなおうどんにのせてもおいしい。あらかじめ好みの汁でおうどんを煮ておき、丼に盛り付けた後、別鍋で作った卵とじをのせればよい。卵に薄くといた片栗を少しまぜるとぐっと口あたりもよくなる。ふわふわの卵とやさしい芹の香りがうどんに良くあう。(立)