芹摘み
「今度いっしょに摘みにいきましょう」と言われ芹の美味しさもあいまって芹への興味がわいてくる。おいしい芹が食べられるうえ、芹摘みに行けるとは。都会では絶対にあじわえない。たとえ芹を食べることができても摘みには行けない。俳句をつくる者としてはぜひ経験しておきたいことだ。あちこち雪が残っている中、長靴をはいて畦を渡り山裾の田んぼを流れる川に着く。春の気配はあるもののまだ冬景色のなか、芹の青さは新鮮で寒いながらも気持ちを明るくしてくれる。まるで古人(いにしえびと)のように芹を摘んで過ごすひととき、こんな贅沢があるだろうか。摘んだ芹の量はいくらでもないが、過ごした時間は遠くを旅して来たような豊かな時間だった。(立)