日脚伸ぶ
心なしか、日が永くなっている。冬至からもうひと月、この時期は一日に一分くらいづつ日が長くなっているらしいから、冬至から数えれば三十分くらいは日が伸びていることになる。
「日脚伸ぶ」という季語は、晩冬の季語、厳密に言えば二月三日の節分までの季語ということになる。これから節分まで日が伸びたとしても、冬至との差はせいぜい四十分くらいというところだろう。してみると、「日脚伸ぶ」という感覚は、三十分から四十分くらいの時間差の感覚にすぎない。それでも、日が伸びたなあ、という思いが否めないのは、夕方の四時から五時ころが日本人の活動の一番活発な時間と重なっているせいかもしれない。
たかが三十分の日脚でもありがたいのは、その先に春の「日永」があるがゆえ。新潟の冬は、むしろ、これからが本格的であるが、「日脚伸ぶ」によって、その先にほんのりと春が見えているのである。(m)
選集にかかりし沙汰や日脚のぶ 高浜虚子
ひと〆の海苔の軽ろさや日脚伸ぶ 鈴木真砂女
日脚のび父の齢をひとつ越ゆ 飴山實