滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半
河川や湖の段差のある場所を多量の水が流れ下る滝。水が落下を開始する滝口から、垂直に近い角度で滝壺に落ちていく姿は壮観で、また、水の落ちる音やその飛沫も滝の大きな魅力だ。この句はその滝口から、水が次々に現れて落ちて行く様子を捉え滝の本質を描いた。言葉は見たまま、あるがままの姿を衒いなく伝えているのだが、滝口までのゆるやかで透明な水の流れ、一気に滝壺に落ちるときの白濁した水のスピードやエネルギー、滝の音と飛沫がつくりだす涼しげな気配まで、滝を見知っている人ならば、くっきりと映像が浮かぶ。速度や色、音などを表す言葉は一切使われていないが、水の動きも色彩も鮮やかに浮かび上がる。(彰)「季語 滝(夏)」