「あをあをと」草が茂っているのは何も若狭だけとは限らない、が、西の都である京、大阪を中心に考えれば、近江はやや草深く、その先の若狭はさらに草深いとも言える。「あをあをと草の」までが短歌でいう序詞のような役目をしていて、「若狭」という地名を導く。つまり、「あをあをと草の」は若狭を讃える言葉に他ならない。句に添えられた「ほととぎす」は声が大きく高いところで鳴く鳥、郭公などと同様、大きな空間を感じさせる季語である。「あをあをとした草の若狭」が平面的な広がりならば、「ほととぎす」はその空間をさらに垂直的に広げている。(m)