使ってみたい季語12 新酒
新米で醸造した酒のこと。現在ではもっぱら「寒造り」が主流ですが、「新酒」という季語は新米を愛でる思いに通じるもの、収穫の喜びと切っても切れない関係に有ります。したがって「新酒」を詠むときは大地を讃え、その恵みに感謝する思いが大切です。とはいえ、酒は酔うもの酔わせるもの、のんべえのほころび顔もおのずと見えてくる季語でもあります。「新酒といふは、俳諧に限れる詞なり。歌、連歌に沙汰なきなり」(滑稽雑談)とあって俳諧だけに用いられた季語、歌のみやびとは無縁のようで、やはり庶民生活に深く根ざした季語なのかもしれません。(kinuta)
旅人となりにけるより新酒かな 才麻
風に名のついて吹くより新酒かな 園女
父が酔ひ家の新酒のうれしさに 召波
八兵衛が破顔微笑やことし酒 一茶
新走その一掬の一引を 稲畑汀子
青竹の筒ひびかせん新走り 長谷川櫂