蓮の実
今年も蓮の実の熟れる時期になった。このころになるといつも思い出す。終戦のとき私は小学一年生だった。日本中が食糧不足の中、親の苦労が今更のようにしのばれる。いつも甘いものに飢えていた子供たち。秋はいろんなものが熟れる。だから秋が大好きだった。
中でも蓮の実、蓮の花が終わると緑いろの蜂の巣状になる。その穴に豆のような実が熟す。母はその蜂の巣みたいな物をぱかんと二つに割って子供たちに分け与えてくれた。
私たちは一粒ずつていねいに穴からほじくり出して薄茶色の皮をむいて食べた。それはピーナツのように白くちょっとやわらかくほのかに甘い。子供たちはそのほのかな甘みでしばし癒された。
蓮の実は熟れると穴から飛び出して水中におちるという。その時音がするというがその様子も見たこともないし、音も聞いたことがない。きっと満月の夜にでも飛び出すのだろうか。蓮池のあちこちでポーン、ポーンと飛んで水の中に静かに落ちていくのだろう。創造するだけで神秘てきでわくわくする。(しをり)
