まいまい句会感想
水音に旋律のあり草紅葉 ひとみ
水音に旋律(メロディー)があるというのは少し無理のようです。単純に直すなら「さらさらと水の流るる」とか「きらきらと」とかになるのでしょうがそれでは平凡だと考えられて「旋律」とされたのだと思います。俳句をもう一歩進めたい気持ちがあるのだと思います。そこを大切にご自分の言葉を見つけてください。ここが俳句の醍醐味です。
詠む一句なほあらためて翁の忌 朝男
少し舌足らずの感じがあります。ご自分が俳句を作られて一句を作りあらためて芭蕉のことを思ったと言う事でしょうか。「推敲を重ねて一句翁の忌」ぐらいになりますが、欲を言えば季語の翁の忌がつきすぎのようです。
体内のアラーム鳴らす今朝の冬 朝男
体内のアラームが読み手には不可解です。
芭蕉忌や名乗りの声の裏返る ヤチ代
名乗りの声のの意味が解りません。何の名乗りなのでしょう。
夜半の冬哲学者めくジャズ奏者 ひろし
点が入っている句ですが、「夜半の冬」などと置かず素直に「冬の夜の」と置いても良いと思います。「哲学者めくジャズ奏者」は雰囲気があります。
やや寒み解凍しきれず調理かな 昌人
「やや寒み」は「やや寒し」の事でしょうか。「やや寒み」はおかしいと思います。調理をするにあたって何か解凍をしているのでしょうが、これでは読み手に伝わりません。
逆光の道の反照暮の秋 昌人
これも読み手にとってはちょっと想像し難い景色です。俳句は十七文字しかありません。
細密画のように何もかも書き込んで世界を作ると言うより、日本画のように余白をたっぷりとって、読み手に大きな世界を想像させる世界です。注意して見ると良い句と言われている句は単純な作りで、難しい言葉は使われていません。
穂芒の涙色して耀(かがよ)へる いつせ
穂芒が涙の色をしているとはちょっと無理かもしれません。「白金に耀(かがよ)ふてゐる花芒」ぐらいでしょうか。
アーモンドチョコレート食べる冬近し ばぶき
沿線を撮影したり冬近し ばぶき
旅行中帰り遅いな冬近し ばぶき
三句とも季語が「冬近し」ですが、これを他の季語に置き換えてみるとどうなるでしょう。
「アーモンドチョコレート食べる春隣」あるいは「沿線を撮影したり秋の暮」「旅行中帰り遅いな夜の秋」三句ともどの季語を入れ替えてもそれなりの俳句になり、いくらでも作れてしまいます。ご自分が何に感銘したのか、何を言いたいのか、ばぶきさんは俳句の形がつかんでおられますので、俳意を確かに句を作る事を心がけて下さい。(立)