一句を読み解く 178
曙や白魚白きこと一寸 芭蕉
白魚は文字通り白い魚、したがって白魚を詠むのに「白い」といってはいけないのが俳句の常識である。「白い雪」とか「赤い薔薇」などと当たり前のことを述べてはいけないと教わったのに、芭蕉はそんなことにお構いなく「白魚しろきこと一寸」と詠んでいる。「白き」も常識なら「一寸」という大きさも常識。それでは、この句は悪い句かといえば、芭蕉の代表句のひとつとされるからややこしい。もしかしたら悪い見本となる句かもしれないが、夜明けの光に浮かび上がった「白魚白きこと一寸」が生き生きとしていることも事実、俳句に禁じ手はないというのが、この白魚の句から学ぶことかもしれない。(m)