使ってみたい季語 夜長
秋の「夜長」に対応する季語が春夏冬にそれぞれある。春は「日永」、夏は「短夜(みじかよ)」、冬は「日短か」という季語がそれである。
秋と春の季語には「長(永)い」が付き、夏と冬には「短かい」という言葉がつく。「長」がゆったりした感じならば、「短」はあわただしい感じということになるだろう。春と秋の比較的過ごしやすい季節はゆったりと長く、夏冬のやや過酷な季節は、追い立てられるように短くという感覚なのかもしれない。
秋の季語である「夜長」、夜を楽しむようにゆったりと、これがこの季語の本意であろうか。「夜長」をネガティブに捉えて、苦しく長い夜という詠み方ももちろんある。
では、ゆったりとした長き夜の句をいくつか。
うきぐもの雨こぼし去る夜長かな 久保田万太郎
それぞれの部屋にこもりて夜長かな 片山由美子
にせものときまりし壷の夜長かな 木下夕爾
ふりむいておのが夜長の影の壁 長谷川素逝
妻がゐて夜長を言へりさう思ふ 森澄雉
漁火の北に片寄る夜長かな 鈴木真砂女
筆硯の夜長き水を足しにけり 細川加賀
長き夜や障子の外をともし行く 正岡子規