「ひびきを」のあとに何か言葉が省略されているのは容易に察しがつく。大切なことは、省略されたことによって強い「切れ」が生じていることだろう。省略されている言葉を普通に考えれば「ひびきを(あげて)長良川」くらいであろうか。「長良川がひびきをあげている、小鳥が来るころになったのだなあ」というほどの解釈になる。それはそれで味わい深いのだが、もう一歩踏み込んで、省略された空間に命令や願望のような働きを読み取ることも可能であろう。「ひびきをあげよ」「ひびきを聞かせよ」というほどの思いである。この句は言葉を省略しているというより、言葉を切り落としているようでもある。(m)