「薇(ぜんまい)」と「蕨(わらび)」
雪が解けるとそれを待っていたかのように伸び出すのが、蕨や薇、独活、蓬、鳥足、うるい、こごみなどの山菜。中でも収穫が多いのは薇と蕨、どちらもシダ植物で、都会の人にはその二つを判別できない人も多いようだ。
薇はその先端部がくるくるとまるまっており、新芽のころは全体が綿毛で覆われている。
ぜんまいののの字ばかりの寂光土 川端茅舎
茅舎の句の「のの字」は薇の先端部のことである。
収穫したものは天日にさらして、もみほぐしながら水分を抜き、からからに渇いた状態で保存する。春に採れるので春の季語になっているが、雪国ではむしろお盆や正月の料理に具されることが多い。
一方、蕨はあくの強い山菜で、採ってきたものは木灰や重曹などであく抜きをして食す。塩漬けで保存したりもするが、薇と違って蕨は旬のものをいただくのが一番、糸を引くほどのぬめりが特徴の山菜である。
めぐる日や指の染むまでわらび折る 白雄
白雄の句、指が染むほどの収穫があったのだろう。指先が黒くなるほどあくが強いのである。乳牛が牧草に混じった蕨を食べると乳の出が悪くなるというほどのあくである。
薇は煮物、蕨はおひたしにするのが一番、酒の肴にいいのは、どちらかといえば蕨であろうか。(kinuta)