今日の季語_葉桜
【鑑賞】
葉ざくらや白さ違へて塩・砂糖 片山由美子
色彩の俳句である。戸外にある葉桜の「緑」とキッチンにある塩・砂糖の「白」が、イメージの中で互いに照らしあい、涼やかなツートンカラーとなる。「白さ違へて塩・砂糖」というさりげない発見も楽しい。
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桜若葉、花は葉に
【解説】
花が散って葉だけになった桜のこと。
【分類】
初夏・植物
【例句】
葉ざくらや南良に二日の泊り客 | 蕪村 |
葉桜や碁気になりゆく南良の京 | 蕪村 |
葉桜や蓑きて通ふ湯治客 | 前田普羅 |
葉桜や忘れし傘を取りに来ず | 安住敦 |
葉ざくらの口さみしさを酒の粕 | 安東次男 |
葉桜や人に知られぬ昼あそび | 永井荷風 |
葉桜となり沖からは何も来ぬ | 鎌倉佐弓 |
葉桜の中に金星あらはれて | 岩田由美 |
葉桜に扉ビーンと響きけり | 久米正雄 |
三味線を弾いて供養の葉ざくらや | 久保田万太郎 |
葉桜にとかくの義理のつらきかな | 久保田万太郎 |
敦盛塚葉ざくら雫もて祓ふ | 山田みづえ |
葉桜としての量感得つつあり | 山田弘子 |
葉桜にてらてら風の光る朝 | 上村占魚 |
葉桜の影ひろがり来深まり来 | 星野立子 |
葉ざくらや盆のやうなる風の向き | 大木あまり |
葉桜の葉のひらめきや電車過ぐ | 島田青峰 |
葉桜の頃の電車は突つ走る | 波多野爽波 |
葉ざくらや白さ違へて塩・砂糖 | 片山由美子 |
葉桜を見遣るや清風湧くゆゑに | 野沢節子 |
葉桜やきのふにかはるくらしむき | 鈴木真砂女 |
葉桜や蕎麦屋でたのむ玉子焼 | 鈴木真砂女 |
葉桜や雪より白き吉野葛 | 長谷川櫂 |
葉桜のまぶしき雨を仰ぎけり | 高田正子 |