一句を読み解く144

菜の花や月は東に日は西に 蕪村
一つの空に月と太陽があり、「日永」という季語を感じさせる一句である。「日永」を即物的にとらえた結果が「月は東に日は西に」である。それに季語である「菜の花」をそえて、一句に仕立てたもの、前回取り上げた「その辺の草を歩いて啄木忌」に通じるものがある。(松)
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今日の季語_菜の花
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花菜、菜種の花、油菜
【関連季語】
菜種蒔く、花菜漬 、菜種梅雨
【解説】
春、菜種畑で一面の黄色い花を咲かせる。菜種油を採るために栽培されるが、葉や茎は食用にもなる。
【分類】
晩春・植物
【例句】
| 菜畠に花見顔なる雀哉 | 芭蕉 |
| 菜の花や月は東に日は西に | 蕪村 |
| なの花の中に城あり郡山 | 許六 |
| 菜の花やかすみの裾に少しづつ | 一茶 |
| 菜の花や淀も桂も忘れ水 | 言水 |
| 菜の花やはつとあかるき町はづれ | 正岡子規 |
| 菜の花や西の遥かにぽるとがる | 有馬朗人 |
| 花菜雨能登はなゝめに松さゝり | 飴山實 |
| 菜の花の失せし近江をまのあたり | 飴山實 |
| 菜の花の中へ大きな入日かな | 夏目漱石 |
| 菜の花の中に小川のうねりかな | 夏目漱石 |
| 菜の花に汐さし上がる小川かな | 河東碧梧桐 |
| 菜の花の中や大きな水たまり | 岸本尚毅 |
| 菜の花に日月淡し師の歿後 | 桂信子 |
| 主に祈る花菜あかるき中に臥し | 古賀まり子 |
| いちめんの菜の花といふ明るさよ | 行方克巳 |
| 菜の花にねり塀長き御寺かな | 高浜虚子 |
| 一本づつ涼しいやうな花菜かな | 細見綾子 |
| 菜の花のおぼろが空につゞくなり | 細見綾子 |
| 菜の花に昔ながらの近江富士 | 山口波津女 |
| 菜の花や児を抱き上げて父若く | 山田歌子 |
| 人麿も来し菜の花の岬かな | 山本洋子 |
| 菜の花の明りの中に水車小屋 | 小寺敬子 |
| 旅に狎れて酔へば菜の花明りかな | 小林康治 |
| 菜の花の月夜の風のなつかしき | 松本たかし |
| 菜の花は濃く土佐人の血は熱く | 松本たかし |
| 菜の花や浦に三十三観音 | 松本梓 |
| 菜の花の花も莟もちらし酢 | 植田房子 |
| 菜の花の莟に出汁を含ません | 神蛇広 |
| サヨナラがバンザイになる花菜道 | 正木ゆう子 |
| 息せるや菜の花明り片頬に | 西東三鬼 |
| つぎつぎに菜の花売つて桶の空 | 斉藤夏風 |
| 菜の花の夜明け月に馬上かな | 村上鬼城 |
| 菜の花を包みて莚雪まみれ | 長谷川櫂 |
| 菜の花にからまる絲は我の絲 | 田中裕明 |
| 菜の花や一夜泊りの安房の国 | 渡辺文雄 |
| 菜の花といふ平凡を愛しけり | 富安風生 |
| 家々や菜の花色の燈をともし | 木下夕爾 |
