亀鳴くを聞きたくて長生きをせり 桂信子

亀は鳴いたりしないが、こう詠まれてみると、人生の年季しだいでは、その声を聞き取ることが出来るようになるかもしれない、という気になる。「亀鳴くはきこえて鑑真和上かな 森澄雄」という句もある。凡人には聞えない亀の鳴き声であるが、どんな風に鳴いているのか大方は想像できる。「欲張らずに、のんびり生きなさいよ」とまあ、そんなものだろうか。
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今日の季語_亀鳴く
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亀の看経
【解説】
亀は鳴かないが季語として扱われる。「蚯蚓鳴く(秋)」同様、架空の事柄が季語となっている。『夫木和歌集』にある藤原為家の「川越のをちの田中の夕闇に何ぞと聞けば亀のなくなり」が典拠とされる。
【分類】
三春・動物
【例句】
| 亀鳴くや水田の上の朝の月 | 梅浜 |
| 亀鳴くや皆愚かなる村のもの | 高濱虚子 |
| 亀鳴くと嘘をつきなる俳人よ | 村上鬼城 |
| 亀鳴くや月暈を着て沼の上 | 村上鬼城 |
| 亀鳴くや事と違ひし志 | 安住敦 |
| 亀鳴くや一升瓶に手が伸びる | 成田千空 |
| 煩悩の一つの亀の鳴きにけり | 長谷川櫂 |
| 亀鳴くや老いといふ語の空しさに | 新倉一光 |
| まだそこにゐたかと亀に鳴かれけり | 中嶋秀子 |
| 亀鳴くや男は無口なるべしと | 田中裕明 |
| 亀鳴くや行きしことなき本籍地 | 小川軽舟 |
| 亀鳴くや木を伐って家あらはなり | 田村奎三 |
| 大丈夫づくめの話亀が鳴く | 永井龍男 |
| 亀鳴くはきこえて鑑真和上かな | 森澄雄 |
| 亀鳴くを信じてゐたし死ぬるまで | 能村登四郎 |
| 亀鳴くや昔小町と云われしも | 田中紫春 |
| 亀鳴くや大般若経六百巻 | 北側松太 |
