季語散策15 残暑

暦の上では立秋を過ぎた後の暑さをいいます。最近では残暑のほうが夏の暑さを上回ることもしばしばです。太平洋高気圧に日本列島が覆われている間は残暑がつづきます。
夏の季語である「暑し」はからっとした感じですが、「残暑」のほうは、「残」の一字にべたついたものが感じられます。
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牛部屋に蚊の声闇き残暑かな 芭蕉
同じ作者の句に「蚤虱馬の尿する枕もと」という句があります。昔は馬や牛は大切な労働力で、人の生活とも密接な関係を保っていました。蚤、虱の句は夏の句ですが、牛部屋の句は初秋になります。ほの暗い中、家畜の匂いと共に蚊の鳴き声まで聞こえて来そうです。
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秋暑し癒えなんとして胃の病 夏目漱石
漱石が胃の病を患っていたのはご存知の方も多いと思います。「癒えなんとして」に漱石のつよい思いが感じられます。人一倍、早く涼しくなって欲しいと願っていたことでしょう。
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芋の葉の大きく裂けし残暑かな 細川加賀
蓮の葉や芭蕉の葉など大きな葉は初めは瑞々しく涼しげですが、大きいだけに風にも傷みやすく時がたつと、触れあった所から茶色に変色して今度は見るからに暑苦しくなります。残暑に息耐えたような葉が無残です。
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如何ともならぬ残暑をなげきけり 阿波野青畝
寒さは重ね着や懐炉などである程度は防げるものの、暑さに対処するには限界があるようです。冷房の部屋を一歩出れば、もう打つ手はありません。世の中如何ともし難い事は沢山ありますが、残暑もその一つという事でしょうか。
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秋暑し覚めても腕に畳の目 木下夕爾
眠気にさそわれごろりと横になり、そのままうとうと。目が覚めて、汗ばんだ腕を畳から剥がすようにして起き上がれば、腕には畳の跡が。こんな事は誰でも一度や二度は経験があるのではないでしょうか。
(立)
