一句を読み解く51

とほのくは愛のみならず夕蛍 鈴木真砂女
蛍が腹部に冷たい光を点滅させて飛び交うのは、集団での求愛行動である。梅雨のころが一番活発で、源氏蛍より一回り小さい平家蛍は、立秋を過ぎてもその活動を見ることができる。
句の、愛の他に「とほのくもの」とはいったいなんだろう。悲哀もしかり、憎しみもしかり、喜びもしかりである。人の心に湧き立つあらゆる感情は、日々淡くなり遠のいてゆくのだが、やはり「とほのいてゆく愛」が作者にとっては問題なのであろう。「愛のみならず」といいながら「愛」にこだわっている少しねじれた俳句である。季語の「夕蛍」は遠のいてゆくはかない愛の象徴であろうか。(kinuta)
