一句を読み解く 191
「一切経」は5000巻にも及ぶ経典で、中でも紺色の紙に金の文字で書かれたものが「金泥一切経」である。仏教全般を網羅した大変ありがたいお経ということになる。
掲句は、そのありがたい経典と「泥を食ふ蚯蚓」が天秤ばかりの上で吊り合っているかのようである。「泥を食ふ蚯蚓」の代わりに「飯を食ふ人間金泥一切経」でも「草を食ふ鹿の子金泥一切経」でもいいわけだが、「泥を食ふ蚯蚓」としがない命を描いたところにこの句の味わいがある。「泥を食ふ蚯蚓」と「金泥一切経」は暗喩で吊り合っているのだが、その吊り合いを支える天秤ばかりは「宇宙」という概念に他ならない。(m)
*長谷川櫂プライベートサイトより引用

