今日の季語_明易
【一句鑑賞】
明易や吹き寄せられし島一つ 長谷川櫂
その辺にある島が、風に吹かれてきたという句。島が「吹き寄せられる」わけはないので、「吹き寄せられてきたような島一つ」ということになる。
この句で大切なことは、「明易」という季語に添って「海」があるということ。朝日に輝く海、朝のしじまに響く波の音、明易という季語には、水辺や海がよく働くのである。
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明易し、明やす、明早し、明急ぐ
【関連季語】
短夜
【解説】
夜の明けるのが早いことをいう。春分をさかいに昼の時間が長くなり、夏至にもっとも長くなる。
【分類】
三夏・時候
【例句】
すぐ来いといふ子規の夢明易き | 高浜虚子 |
みづうみをわたる雨あり明易し | 中田剛 |
カーテンの太しく垂れて明易き | 星野立子 |
ユダヤ人ばかりの町の明易き | 久保田万太郎 |
人の世の歳月もまた明易し | 下村梅子 |
天王寺さんは大寺明易し | 阿波野青畝 |
旅仕度とゝのへあれば明易き | 上村占魚 |
明易き人の出入や麻暖簾 | 前田普羅 |
明易き水に大魚の行き来かな | 芥川龍之介 |
明易き絶滅鳥類図鑑かな | 矢島渚男 |
明易し杉の木立のすくとあり | 阿部みどり女 |
明易し看取女おのが髪を梳く | 森田峠 |
明易の湯に荒々と山の雨 | 辻桃子 |
明易やしてやりたかりしことばかり | 成瀬桜桃子 |
明易や一里ひがしに老ノ坂 | 大峯あきら |
明易や愛憎いづれ罪深き | 西村和子 |
明易や花鳥諷詠南無阿彌陀 | 高浜虚子 |
東京の病院に一夜明易し | 阿部みどり女 |
足洗ふてつい明け易き丸寝かな | 芭蕉 |
象潟や苫屋の土座も明やすし | 曾良 |
明け易き夜やすり鉢のたまり水 | 梅室 |