季語 冬籠(ふゆごもり)
もともとは草木が冬になって葉を落とし、その精気が地中深くもぐることを意味する季語であった。それが、人の生活に転化され、寒風や雪によって活動の自由を奪われた人が家に閉じこもることを意味する季語になった。例句をみても、草木の冬籠を詠んでいる句は見当たらない。外部との接触が少ないながらも、そこに静かな喜びを見出しているような句が面白いだろうか。芭蕉の「折々に」の句や松本たかし の「夢に舞ふ」などの句は、その意にかなっている句といえよう。いずれにしても、春を待つ心がこの季語の本意である。(m)
冬籠りまたよりそはん此の柱 芭蕉
金屏の松の古さよ冬籠り 芭蕉
折々に伊吹をみては冬ごもり 芭蕉
鼠にもやがてなじまん冬籠 其角
此の里は山を四面や冬籠り 支考
新しき茶袋ひとつ冬籠 荷兮
冬ごもり籠り兼ねたる日ぞ多き 白雄
薪をわるいもうと一人冬籠 正岡子規
夢に舞ふ能美しや冬籠 松本たかし
けものよりけものめきてや冬籠る長井亜紀
古本は昭和の匂ひ冬籠 赤林有子